芸能

松山ケンイチ『ど根性ガエル』 斬新なチャレンジに作家脱帽

 映像における特殊効果の技術革新は、ドラマの常識をも変えるかもしれない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 一斉にスタートした夏ドラマの中で、ひときわ異彩を放つ作品がある。『ど根性ガエル』(日本テレビ系土曜午後9時)。

 有名な原作から16年後の後日談、という設定のオリジナルストーリー。主人公・ひろし(松山ケンイチ)は30歳になっても母親に依存し、ブラブラしている情けない男。放送が始まる前、人気漫画・アニメの「実写化」に不満・批判の声もあったとか。

 しかし、第1回目が放送されると否定的な声はぶっ飛んだ。これまで目にしたことの無い斬新なチャレンジ。このドラマの際立った個性を、次の3つの点から考えてみたい。

●説明セリフを排する姿勢

 いくら有名な漫画でありアニメが下敷きだとしても、物語の設定そのものは荒唐無稽でシュール。平面ガエルのピョン吉が人間と会話したり、人生相談にのったり。ピョン吉に引っ張られてTシャツは空を飛び、水に潜る。そうした奇抜な設定が、「実写版ドラマ」として馴染むのかどうか。物語として成り立つのかどうか、が関心の的だった。

 一言でいえば、成功している。「あり得ない」を、くだくだと説明するセリフを排して、映像と演技で語りかけてくる。VFX(特殊視覚効果)を駆使し、Tシャツのピョン吉をしゃべらせる。しかし、特殊効果の技術に依存しすぎず、声を担当する満島ひかりのセリフとVFXとが、うまくバランスしている。満島の巧さが光る。

 松ケンをはじめ他の登場人物たちも、躊躇なく全力でシュールな世界を演じきっている。おかげで視聴者はつまずくことなく物語の内側へ、すっと自然に入っていける。それもこれも、高度な演出の技があってこそ。ドラマ設定の不自然さを視聴者がいちいち気にし始めたら、ストーリーに没入できなくなる。その危険性を上手に超えた。

●役者の配置、絶妙なバランス

 ヒロイン・京子ちゃんを演じている前田敦子が、実にいい。「一人だけ演技下手」などとネットでは酷評されているが、私はまったくそう思わない。

 このドラマの京子は、ひろしの「しょうもない熱さ」に対置する駒だ。だから、感情を入れずクールに、棒きれのようにぶっきらぼうにしていなければ。前田敦子は、そうした自分の役の意味を、よく理解している。素っ気なく不機嫌を貫く演技はなかなかのもの。後半に突如爆発する感情的セリフが、その分、ド迫力を持った。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン