絶対的有利といわれながら、セ・リーグの大混戦に甘んじている巨人の体たらくを、心から嘆く1人の重鎮OBがいる。広岡達朗氏、83歳。現役として巨人黎明期を支え、監督としては弱小だったヤクルト、西武を優勝に導いた同氏が、舌鋒鋭く巨人の病巣を突く。週刊ポストで展開中の〈広岡達朗の「週刊ジャイアンツ批評」〉よりお届けする。
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今の評論家は負ければ貶して勝てば褒める──そんな奴ばかりですが、私は本当の野球とは何かをお伝えしたいと思っています。
野球では、試合に勝っても勝ち方が良くないということは多々あります。まさに今の巨人がその状態です。
フロントがいい選手を集めてくれる巨人は、勝って当たり前。だからこそ勝ち方にこだわらなくてはならない。それに他球団は巨人の真似をする。巨人が今のような野球をしていると、球界全体がダメになる。
はっきり言いましょう。原辰徳監督は今のままではダメです。選手の素質だけに頼って勝って、数字だけ残しても、名監督でもなんでもない。
野球で勝つには、そのチームごとに「戦力の方程式」を考えなくてはなりません。ただ、頭で理論を考えれば勝てるものではない。頭がいいほうが勝つなら、東大は今頃連戦連勝しています。正しい理論は、膨大な練習量が伴って初めて実証されるのです。
強かった頃の巨人には、それが自然と行なわれる土壌がありました。打撃では、あのカワさん(川上哲治)でさえ、多摩川で打って打って、打ちまくった果てに無意識で球を打つ境地に至り、打撃の真髄を悟ったといっていた。
守備も同じです。ロッテのGM時代、選手に1000本ノックをさせればいいというと、バレンタイン監督が「イジメだ」などと反論したがとんでもない。いい恰好をして捕ろうとするからスランプになる。守備でも無意識で球を捕る境地に達しなければならないのです。そのために1000本ノックが必要なんです。
無意識で体が動くようになれば選手の「本性」が出る。そこで監督が選手の本性と適性を見極めチームを作っていくんですよ。だから本来、監督の仕事は2月のキャンプでほぼ終わっているのです。