俳優の江守徹は、ナレーションの名手としても知られている。ナレーションについて江守が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。
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江守徹といえば、ドキュメント番組やテレビCMなどナレーションの名手としても知られている。個人的にはテレビ時代劇シリーズ『斬り抜ける』のものが絶品だと思っているが、その透明感のある声となんともいえない優しい情感が、特有の説得力を映像にもたらしている。
「その番組を深く知ってもらうために説明する役どころだから、ナレーションは非常に重要だと思います。特にドキュメンタリーではそうですね。
こちらとしては、ちょうどいい具合にやりたい。そのためには、自分のナレーションがどういう風に聞こえているかということが自分の耳にも聞こえてこないとまずい。自分で言いながら、その時に視聴者の感覚として聞こえてきたら上手くいっていると思う。
そのためには、よくフィルムの内容を理解していないとダメですよね。ドラマでもそう。そのドラマの内容をよく知っているということが大事じゃないのかな。ナレーションというのは視聴者のためについているわけだけど、理解しないと届けることはできないですよね。
声に関しては、この声しか持ち合わせてないから。それを変に変えたりすると不自然になるから、変えるとしても、あくまで言い方だけですね。その時に、どういう気分になって読むか。でも、悲しいドラマだからって悲しいナレーションしたら、おかしいから」
1981年の文学座公演『ハムレット』では主演に加えて自ら演出もしている。