これを突破し、脳の神経に遺伝子を届けると同時に、安全性と有効性を担保するため、ヒトに対しては高度に精製したADAR2遺伝子ベクターを作る必要がある。アデノ随伴ウイルスベクターは、非病原性で安全性が高く、すでに他の疾患の臨床試験に使われ、10年間も目的遺伝子を発現し続けている。
「現在、ヒトに使えるように精製度を上げた遺伝子を搭載したベクターを作っています。これを使い、今年度中にマウスや大型動物に対して遺伝子治療を行ないます。さらに安全性と有効性を再確認したところで、臨床研究を実施する計画です」(郭客員研究員)
有効な手段がなかったALS治療にとって、新しい遺伝子治療に対する期待は大きい。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2015年7月17・24日号