ポールソンは近著「DEALING WITH CHINA」で王との親密な関係に言及。王が1996年夏、ポールソンが社長兼最高執行責任者(COO)を務めていた米ゴールドマン・サックスのニューヨーク本社を訪れ、両者は初めて面識を得たという。
王は当時、建設銀行総裁を務めていた。彼は中国電信集団の株式上場という中国政府にとっても極めて重要なビッグプロジェクトを手がけており、ポールソンに同社が株式上場の主幹事を引き受けてくれるよう要請。
翌1997年2月、ポールソンら同社最高幹部を北京に招待し、中南海・紫光閣で当時の朱鎔基首相との会見をセッティングし、同集団のニューヨーク株式市場への上場などの問題について話し合っている。
このプロジェクトは結果的に、同集団から分かれた中国電信(香港)が同年10月、ニューヨーク市場に上場を果たしたことで成功。ポールソンは1998年、ゴールドマン・サックスの会長兼最高経営責任者(CEO)に昇進し、その後も中国電信集団の傘下企業の上場に尽力。
ポールソンが2006年7月、米財務長官として米ブッシュ政権入りすると、当時副首相だった王のカウンターパートとして、両国の金融・経済政策を協議し、双方がウィンウィンの関係であるように調整し息のあったところをみせた。
また、王はポールソンを習近平に紹介した。その甲斐もあってか、ポールソンはいまでも訪中すれば、習近平ら最高指導部と会見しているほどだ。
彼は同書で、王はポールソンばかりでなく、「米政府や金融界の要人との親密な関係を築いている」と指摘し、王が米政府中枢に食い込んでいたことを明らかにしている。王が米金融機関に知人の子弟の就職を頼んだとしたら、米側は断り切れなかっただろう。
かりに、王らとの通信記録が明らかになれば、王の疑惑が白日の下にさらされることになりかねない。そうなれば、腐敗摘発の陣頭指揮をとっている王の権威は地に落ち、これをきっかけに、習近平の権力基盤が大きく揺らぐ事態も考えられる。
※SAPIO2015年8月号