5月1日付の英紙フィナンシャル・タイムズは「米中の行く手に待ち受ける『冷たい平和』台頭する中国」の見出しで、中国が南シナ海の岩礁を埋め立てて、軍事基地を建設しようとしていることに米国が強く反発し、米中が「冷たい平和」の関係に突入していると説く。
ジャーナリストの相馬勝氏が、米中間の相互不信関係についてレポートする。
* * *
米中軍事対立の可能性も現実化するなかで、米側は意表を突く手段に打って出た。
米司法省と米証券取引委員会(SEC)は4月下旬、米金融大手ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなど6社に対し、いまや腐敗摘発で習近平指導部の実質的ナンバー2にまでのし上がった感がある王岐山をはじめ党・政府高官35人との通信記録を提出するよう命じたのだ。
米国の海外腐敗行為防止法に基づくもので、王らがこれら6社に対して、政府高官の子女を雇用するよう働きかけたとの疑惑が浮上しているためだ。
特に、王は中国建設銀行総裁や中央銀行の人民銀行副総裁を歴任するなど金融界出身で、副首相時代には当時のティモシー・ガイトナー財務長官らと親密な関係を築いたことで知られる。また、王は2008年9月のリーマン・ショック時に、当時のヘンリー・ポールソン米財務長官と密に連絡を取り合い、金融政策についてアドバイスを受けたとされる。