同じ大阪にある高校野球の有名校だが、1956年創部のPL学園と1988年創部の大阪桐蔭はことごとく対照的な特徴を持つ。
PLは名将・中村順司監督の下、「チームワーク」を第一に考えた。チーム打撃、送りバント、守備でのカバーなど、「チームのために自分は何をしたらいいのかをまず考える」野球である。
対する大阪桐蔭は中田翔(日本ハム=2008年卒業)や森友哉(西武=2014年卒業)のように、誰もが躊躇なくバットを振り切る「マン振り(フルスイング)」で知られるように、とにかく各自が振り切ることが求められる。高校通算55本塁打を放ち、社会人を経て2000年に西武入団、4球団で13年間プレーした後、現在はトムス野球塾を経営する水田圭介氏はこう証言する。
「バントやエンドランの練習はしたが、試合中にそんなサインが出た記憶はあまりない。もちろんチームバッティングがまったくなかったわけではないが、“当てに行くくらいなら振り切れ”という指導でした」
先輩・後輩の関係性も独特だ。PLのOBの片岡篤史氏はかつて『週刊ポスト』取材にこう答えている。
「PLでは先輩・後輩の上下関係が絶対。特に寮生活ではそれが厳しかった。その生活から、先輩は今何を欲しがっているか、目配り心配りができるようになり、それが相手を思いやる気持ち、チームワークにがった」
一方の大阪桐蔭。今年のオールスターで象徴的な一幕があった。藤浪晋太郎(阪神=2013年卒業)と森が試合中にテレビインタビューを受け、その時に藤浪が「森さん、ありがとうございました」というと、森が「お疲れ、次は打つわ」と答えた。学年は森が1年後輩である。あるPLのOBはこう語った。
「PLでは絶対に考えられない。いくらメディアの前での無礼講とはいえ、先輩にタメ口なんて怖くて今でも震えてしまう」