企業側が運用した退職金の受け取り方には大きく分けて、退職時に「一時払い」として一括で受け取る方法と、「年金」方式で分割して受け取る方法(いわゆる企業年金)の2つがある。多くの企業では退職者がどちらの受け取り方がいいかを選べるようになっている。
では目の前に「一時払い」「年金」の選択肢がある時、どちらを選ぶのが得なのか。
一時払いのメリットとして、年金方式に比べて手取り総額が大きいことが挙げられるが、それ以外にも、住宅ローンの前倒し返済など、定年退職直後のまとまった出費に対応できる点がある。
しかし、それが時として落とし穴にもなる。ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が語る。
「手取り総額が大きくなると知って一括でもらう人が増えているが、それを浪費してしまう人が多い。
ある製薬会社の部長クラスの人は60歳で定年退職した時に企業年金の半分にあたる1250万円を一時払いで受け取りましたが、豪華海外旅行に費やして数年で使い切ってしまったそうです。
すべて一時金で受け取っていたら間違いなく、それも使っていたでしょう。自分で計画的に取り崩していけない人には年金方式が望ましい。定期的に振り込んでもらい、“限られたお金を大切に使う”というかたちになりますから」
また、ファイナンシャルプランナーの益山真一氏は「夫婦仲が悪い」場合も注意が必要だと語る。
「退職金を一括でもらったと同時に離婚を切り出され、妻に一時金の半分を持っていかれてしまうケースもあります」
一度に多額の現金が手に入ると、それが離婚のきっかけになりやすいのだ。