給料が上がっているというニュースが増えているが、喜んでいいことなのだろうか。経済学者で投資家の小幡績氏が、給料は上がったが、商品の値上がりのほうが大きいこと、労働と労働環境の変化について解説する。
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今後給料が上がるか、これからの生活が楽になるのかは、私たちにとって最も関心があることですよね。
データ上は賃金は上昇しています。厚生労働省が発表している毎月勤労統計調査で、今年5月には、「毎月1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比0.6%増」となりました。増えた内訳を見ると、所定内給与(いわゆる基本給)が少し増え、特別給与(ボーナスなど)が大幅に増えた一方、残業手当などの所定外給与は減少している。
難しいのは、このデータの意味です。上昇したことはいいことですが、まだほんのわずかです。1年間で0.6%ですから、実感としては「ほとんど増えていない」と言ってもよいでしょう。
また、これは平均で、すべての人の賃金が上がっているわけではありません。内訳を見ると、ボーナスが大きく増えています。5月は通常のボーナス期でないことを考えると、一部の企業で前倒しでボーナスが配られたことを意味しています。つまり、一部の儲かっている企業のボーナスが大幅に増えただけで、その他の企業では特に増えていないことになります。
5月にボーナスが配られたのは一部の企業ですが、6月、7月は多くの企業でボーナスが出ます。輸出の多い製造業や金融、不動産などを中心にかなりの増額が期待されますから、ボーナスが増えたという実感を持つ人々は増えるでしょう。一方で、ボーナスがそれほど増えない企業も多くあり、業界や企業によって、給料に対する実感も分かれるはずです。
さらに、残業代が減っていることをどう考えるかです。これは実は良い面もあります。給料が増えていると言っても残業させられた分が増えているだけなら、長時間労働でむしろ不幸になっている可能性があるからです。
ただし、残業が減るのが良いか悪いかは、解釈が異なるところです。