この議論の中でいつも出てくるのは、今の20歳を見てもまともな大人とは言えない幼い若者たちが多いから、成人年齢まで18歳に引き下げるのは反対だという意見である。
しかし、私の意見は逆だ。仮に18歳なら18歳、20歳なら20歳を「成人」と決めたら、その年齢までに成人と呼ぶにふさわしい人間になるよう育てる教育をすべきなのであって、日本人は何歳になったら大人になるのかという議論は、全く意味のない本末転倒の議論だと思う。
むしろ重要なのは、21世紀の日本にはどういう社会人が必要なのか、そのために(税金を投入する)義務教育の内容はどうあるべきなのか、という議論だ。
それはたとえば、お金を借りたら必ず返しましょう、喫煙する時はこういうマナーを守りましょうといった初歩的なことに始まり、自分が住むコミュニティに対してどのような貢献をしなければならないのか、日本の社会人として世界にどういう責任を持つべきなのか、といったことまで幅広い。ところが、そのような教育は今の文部科学省の指導要領の中にはほとんどないのである。これは極めて由々しき問題だと思う。
※週刊ポスト2015年8月14日号