そこで脳卒中後の意識障害の患者にリバスチグミンを使用したところ、1例目のくも膜下出血術後の患者では、昏睡状態が、貼って1時間もしないうちに覚醒し、しゃべり出した。その後、1か月ほどで自分の足で歩いて退院した。2例目の脳卒中の患者も同じように著効(ちょこう)が確認された。その後、全部で50例に実施したが、著効は約20%、何らかの変化があった例を加えると約50%に症状改善が見られた。
「脳卒中急性期は、脳浮腫(のうふしゅ)で意識障害が起こることもあり、術後1か月程度経過し、脳の腫れが治まり、慢性期になってから治療を行ないます。大脳に障害のある患者には効果がありますが、意識の中枢である視床、脳幹などが障害されている場合は、ほとんど効果が認められませんでした」(平川副院長)
リバスチグミンは4.5mg、9mg、13.5mg、18mgの4種あるが、意識障害の治療には4.5mgを使う。用量が多すぎると副作用や錯乱が起こることもあり、少量の適量を使うことが重要だ。この薬の、意識の覚醒に対するメカニズムはわかっていない。今後の研究では若年の寝たきりの患者にも有効なのでは、と期待されている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2015年8月14日号