高校野球は今日12日で参加校が全て登場し、前半戦を折り返す。そこで初戦を突破した学校の中から、次戦の見所を現地で取材を続けているフリー・ライターの神田憲行氏が紹介する。
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◇スクールカラーとは?
高校野球では選手のユニフォームとアルプススタンドの配色に共通色があるのが普通だ。スクール・カラーという奴である。
ところが大会初日に登場した長野代表・上田西の試合を見ていて不思議に思った。ユニフォームはグレーでアンダーシャツは黒なのに、応援団が持つメガホンは赤で、アルプスが真っ赤に染まっているのだ。試合後にさっそく上田西の部長に聞いた。
「赤というのは、上田城を築城した真田昌幸にちなんだ色で、ユニフォームの袖に入っている校名、ソックスのラインにも採り入れています」
上田城の真田昌幸は関ヶ原の合戦で徳川の大軍を撃退したことで武名が高い。その真田軍は「真田の赤備え」といわれるように、旗指物などに赤を配色していた。
「じゃスクール・カラーは赤なんですね」
「いえ、緑です」
「えっ」
「でも県大会などでは上田市内の学校はみんな赤を使うので、メガホンなどは違う色を使います」
「そこが緑で」
「(記録員の生徒が)ブルーです」
「えっ。それじゃあ、緑はどこに反映されているんですか」
(部長、選手のユニフォームを上から下まで眺めて)「あんまり反映されてないですね……」
上田西、今日の第3試合で作新学院と対戦です。ぜひ「緑」を探してください。
◇過熱する清宮人気
大会3日目は「土曜日」「話題の早稲田実業・清宮幸太郎選手が登場」「敦賀気比対明徳義塾の好カード」「地元・大阪偕星登場」と、麻雀でいえば「大三元・字一色」のダブル役満みたいな日。当然多くの客入りが予想された。
試合開始は8時だが、筆者が阪神尼崎の駅に6時にいくと、駅の構内アナウンスが。
「今日は高校野球が開催され、梅田からのお客様が満タンです。分かれてご乗車願います」
ホームの客「満タンて(笑)」
甲子園駅に着くと、人で球場周辺が埋まっていた。チケットを求めるお客さんの行列が高速道路の高架下を通って駅まで達し、さらにそこから折り返して高架下近くまで到達していた。筆者は20年以上取材しているが、ここまでの列は記憶に無い。
試合前の取材でも、さっそく清宮選手をテレビカメラが囲む。決勝戦前の監督インタビュー並みである。三重になった報道の輪の向こうから、リポーターの質問が聞こえてきた。
「朝食はなにを召し上がりになられましたか」
「昨日の夜、夢はご覧になりましたか」
質問の内容はともかく、大げさな敬語の使い方に、早実のユニフォームを着てカメラの前に立っているのは清宮君ではなく王貞治さんかと思った。
民放のラジオ中継もアナウンサーが最初から興奮状態だ。初回1死二塁のチャンスに清宮選手に打席が回ると
「敬遠か!?」
あとの清宮選手の打席にレフトからライトへの風が吹くと、
「清宮の風が吹いている!」
「後ろの4番加藤君も怖いバッターですから、敬遠はないでしょう」など、冷静に解説する大藤敏行・前中京大中京監督が気の毒になった。
過熱する大人のなかにあって、当の清宮選手は試合後に、
「全打席ヒットを打つぐらいの気持ちで、次の試合はしっかり修正して(チームに)貢献したい」
と受け答えする「普通さ」にホッとする。早稲田実業は明日13日第1試合で広島新庄と対戦する。