訪日外国人旅行者の急増に伴い、東京や大阪など都市部を中心にホテル不足に陥っている。そのため既存ホテルの増築や新規オープンなどが相次いでいるが、需要に追いついていないのが実情だ。そのニーズを補うかのように、ホステルやゲストハウスと呼ばれる旅館業法上の旅館や簡易宿所区分を利用した宿が急増している。
日本唯一のゲストハウスジャーナリストで『Japan Backpacers Link』代表の向井通浩さんによれば「インバウンドと呼ばれる訪日外国人の宿泊需要は、前年比30%増の拡大が何年も続いて」いるという。
「アベノミクスの観光立国政策で東南アジア向けの日本入国ビザが緩和され、為替の円安誘導とで外国人にとって日本円が割安になり、訪日旅行者は増えていました。そこに2020年東京五輪が決まり、さらに外国人旅行客を増やしています。日本におけるホステルの歴史は概ね16年ほどで、最初の頃は大きなバックパックを担いだ若者が中心的なお客さんでしたが、ネットが発達し予約しやすくなったため今ではスーツケースで旅行する女性や家族連れの利用も増えています」
バックパッカーが泊まる宿というと、ひと昔前には安いがあまり手入れが行き届いていないと言われたものだった。今では、トリップアドバイザーなど旅行口コミサイトで宿の評判が広く共有されるため、全体的に設備やホスピタリティ、そしてコストパフォーマンスも向上している。ホテルのように宿泊者のニーズを先回りするようなサービスはないが、旅人どうしの距離を縮める雰囲気が好評で、年齢や職業に関わらず利用者は拡大している。また、マネージャーをはじめスタッフと宿泊者の距離が極めて近いのも特徴的。
「普通の生活をしていると、どうしても出会う人の職業などは偏ります。でも、ホステルに泊まると会社員だけでなく職人さんや学者などいろんな人がいます。20代と40代というように年が離れると普段なら話をすることはまずありません。でも、同じ旅人同士というだけで、自然に会話できる雰囲気になり、とりあえずお互いにFacebookの友達申請をして繋がっておくようになりますね」(前出・向井さん)
ゲストハウス、バックパッカーズなど様々な呼び方をされるホステルには、規模などによる明確な定義はまだない。今ではドミトリーと呼ばれる相部屋だけでなく、個室のあるホステルも少なくない。共通する特徴は、共有のキッチンやリビングがあり、その日の宿泊者と交流できること。かつては清掃やイベントへの参加が義務づけられていた教育的意味も強いユースホステルと比べ、宿泊客やホステルのスタッフと打ち解けやすい雰囲気で運営されている。