スーツ姿に短いネクタイ、丸刈り頭に残った前髪がトレードマーク。105kgの巨漢でキレのある激しいダンスを披露する、芋洗坂係長(47才)。そんな自称「歌って踊れるデブ芸人」が昨年、意外なところで注目を集めた。劇団四季のディズニーミュージカル『アラジン』のオーディションに参戦したのだ。しかし、60人の本選まで進んだが結局、落選してしまった。いったいなぜトップレベルのミュージカルに挑戦しようと思ったのか? 本音で振り返ってもらった。
――そもそも、オーディションを受けようと思ったのはなぜですか?
芋洗坂:『アラジン』のジーニーというランプの魔人が好きで、こういう面白い役ができたらな、という思いはずっとありました。ミュージカルで踊りや芝居を本業でやってきましたが、歌がちょっと自分の中で弱かったんです。これを機に自分の実力を思い知って、ちゃんと歌を勉強しようと奮い立たせるためにも、受けて挫折しないといけないなと思って。
――オーディションを受けると決めて、どんな取り組みをしましたか?
芋洗坂:オーディションの1か月前に受けると決めてから、ボイストレーニングを始めました。今までも何度か受けていたんですけど、今回の課題曲が難しい曲だったので、高い声が出る発声法などを教わりました。それで芝居と歌の発声は全然違うと気づきましたね。もちろん腹筋が必要なのは一緒ですが、喉の力を抜いて声帯だけで声を出すと、すごく楽に声が出るんです。それを知らなかったので、声を出しては潰しを繰り返していました。根本から違ったんだなって。
あと知り合いのミュージシャンが、譜面通りのカラオケを作ってくれたんです。ぼくはピアノを弾けないし譜面も読めなかったので、もらった譜面をどう勉強すればいいのかわからなかったんです。メロディーのガイドラインが入ったカラオケと、伴奏だけのカラオケを作ってくれたので、助かりましたね。それがなければお手上げでした。仕事の空き時間は、常に練習していました。
――すべての役を合わせて、応募総数は1500人。書類審査で500人まで絞ったということですが、芋洗坂さんは最終まで残ったんですよね。
芋洗坂:はい。1次審査は課題曲、ジーニーのテーマソングである『フレンド・ライク・ミー』を歌いました。位置に着いたら、自己紹介も何もなく、「はい歌ってください、用意スタート」で、「ありがとうございました」の流れ作業です。次の最終選考は台詞やダンスも入ってきて、アラジンが魔法のランプを擦ってジーニーが登場して、歌に突入します。
――ジーニー役は何人くらいでしたか?