100周年記念大会と銘打った今年の「夏の甲子園」は、例年にも増して国民を熱狂させた。近年まれに見る個性あふれる怪物選手たちの活躍が大きな理由だろう。
前評判の高かった「スーパー1年生」こと早稲田実業の清宮幸太郎(16)は、圧倒的なパワーとリストの柔らかさで長打を量産、外野席に突き刺さる弾丸ライナーにはすべての高校野球ファンが度肝を抜かれた。「ラグビーの清宮克幸の息子だからマスコミに騒がれているだけ」と色眼鏡で見ていたアンチを黙らせるには十分すぎるインパクトだった。
関東第一のオコエ瑠偉(3年生・18)は、50メートル5秒台の俊足を武器に躍動した。打席に入ればファースト強襲の内野安打を二塁打にしてしまい、センターを守れば「誰が見てもヒット」の打球をもぎとってしまう。「プロに行けば今すぐ盗塁王候補」(パ・リーグ某球団スカウト)という逸材である。
彼らは生まれ持った才能だけを武器にスターとなったわけではない。細部に注目するとそれがよくわかる。バッティンググラブを外した清宮の右手を見ると、小指の爪下という普通では考えられない場所にマメができていた。小指はバッティングの際、もっとも力が入るといわれるポイントである。清宮のスイングスピードは人知れぬ努力に裏打ちされたものなのだ。
オコエは道具にこだわり抜く。野球メーカー・SSKに特注したグラブは「中指出し」モデル。
グラブから指を出すのは人差し指が普通だが、中指を出すことでボールをグラブの中央で捕球しやすくなるという。脚力を支えるスパイクも軽量化に特化した特注品。30センチの大きな足への締め付けを嫌い、ヒモではなくベルクロタイプを使用している。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2015年9月4日号