仮に値上げされなかったとしても、警戒が必要だ。近年、食料品では、ソーセージの一袋あたりの本数を減らすなど、価格をそのままに内容量を減らす「隠れ値上げ」が行なわれてきたからだ。消費者に気づかれないよう、こっそり商品の量や質を下げる実質的な値上げは、また繰り返されるに違いない。
医療費には消費税は掛からないが、8%へ引き上げの際には、医療機関等に実質的な負担が生じないように、診療報酬が引き上げられた。「平成26年度診療報酬改定」では、消費税引き上げ対応分として診療報酬が1.36%引き上げられ、事実上の“増税”となった。再来年の10%へのアップ時にも、同様に報酬が引き上げられる可能性が高い。
自民党の有力支持基盤である医師への報酬は増やす一方で、政府は医療費の財政支出を抑えにかかっている。しわ寄せは患者にいく。
「6月30日に閣議決定した『骨太の方針』では、社会保障費の自然増を3年間で1.5兆円削減する方針を打ち出しました。これは健康保険料や患者の自己負担を高める方針を示したも同然です。高齢者の医療費負担が高まるでしょう」(前出・荻原氏)
高齢者にとって医療費は命の値段そのものだ。政府は長生きするなといっているに等しい。 このように、年金減と消費増税というダブルショックに加え、物価高と医療費値上げという波状攻撃で下流老人が続々と生み出されていくのである。
※週刊ポスト2015年9月4日号