現在の日韓の対立は、韓国の反日が日本の嫌韓を生み、それがまた韓国の反日を促進する──こういった負の相乗効果だと、著書『日韓対立の真相』(悟空出版刊)において外国戦の舞台裏を赤裸々に明かした前・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏はいう。韓国の反日勢力の主体のひとつ、慰安婦問題解決を妨害してきた一部の声の大きな勢力について、武藤氏が解説する。
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反日勢力の主体のひとつは歴史問題を扱う市民団体やNGOで、中でも急先鋒として知られるのが韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)である。
挺対協は1990年代はじめ、「慰安婦問題」解決のために組織された韓国の民間団体で、ソウルの日本大使館前で毎週行う「水曜デモ」が1000回を超えたことの記念に「慰安婦像」を大使館の目の前に設置したことでも知られる。
同時に、日本政府の謝罪や反省、補償が十分ではないとの考えから、元慰安婦に対して、日本の「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」からの「償い金」や、村山首相の「おわびの手紙」の受け取りを拒否させたり、受け取った7人の元慰安婦に、露骨な嫌がらせをしたりした(*注1)。
【注1:韓国紙『ハンギョレ』(7月13日付)は慰安婦団体関係者の発言として〈(日本で)挺対協が被害者の意思を無視したまま、アジア女性基金を拒否するなど…問題の解決の妨げになっていると、根拠もなく非難する人々が増えている〉と書き、武藤氏の著書などにより挺対協の実態が批判されてきていることに懸念を表している】
そういう団体だから、韓国政府に圧力をかけることは常だ。日本が「アジア女性基金」を設立して慰安婦問題の解決に向けて努力した1995年、当初、韓国政府は「これまでの被害者の要求がある程度反映された誠意ある措置であると評価したい」と論評していた。しかし、挺対協の横やりを受けて徐々に態度を曖昧にしていき、韓国政府も最後には「被害者たちが納得する措置を日本政府には取ってほしい」と評価を一変させてしまった。