9月1日は防災の日――。東日本大震災以降、大きな災害に備えて「防災グッズ」を大量に買い揃える家庭も増えたが、その保管状況について継続的に見直している人は少ないのが現実だ。
「東日本大震災が起きたとき、近所のスーパーやコンビニの棚が空っぽで買い物に困った経験があるので、自宅には保存期間の長い乾パンや水やお湯を注ぐだけのご飯など“非常食”をストックしてきました。
でも、先日、気付いたらほとんどの食品が賞味期限を過ぎていて、ごっそりと捨てました。いまは、おいしくもない非常食をまた新しく買い替えようという気がなかなか起こりません」(神奈川在住の30代主婦)
備蓄意識があるだけ、まだいい。アサヒビールが2012年8月に実施したアンケートによれば、非常食を含めた防災グッズの準備について、「考えているもののまだ行っていない」と回答した人は46.7%、「特に準備するつもりはない」と答えた10.7%と合わせると半数を超えた。
震災からわずか1年後の調査、しかも、被害が少なかった西日本エリアで準備していない人の割合がさらに多い結果が出ていたことを考えると、全国的な危機意識は一層薄くなっているかもしれない。
非常食の備蓄が進まない背景には、前出の主婦のように「おいしさは二の次」というイメージが根強かったことが大きい。だが、近ごろは「味気ない」と思われてきた非常食も格段に進化している。
例えば、長期保存食製造大手の尾西食品は、炊きたてのご飯を急速乾燥させ、水を入れても60分で食べられる「アルファ米」で有名だが、白米のほか、五目ごはんや松茸ごはん、ドライカレー、エビピラフなど豊富なラインアップを揃えている。
また、江崎グリコやハウス食品は加熱しなくても食べられる常備用のレトルトカレーを発売済み。5年程度の長期保存が可能なうえ、栄養価や風味が失われないよう開発されており、「おいしさ」を重視しているのが特徴的だ。大手食品メーカーでは、グリコの「ビスコ」やヤマザキナビスコの「リッツ」などロングセラーの菓子類でも長期保存が可能な缶入り商品が多数販売されている。