人間が生きる上で欠かせない恋愛だが、度を超すと依存症になることがある。長野県の諏訪中央病院名誉院長でベストセラー『がんばらない』で知られる鎌田實医師が、プロゴルファーのタイガー・ウッズも陥ったセックス依存症のメカニズムについて解説する。
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近頃、若者の「草食化」が問題視されている。6月に公表された内閣府の「結婚・家族形成に関する意識調査」でも、20代と30代の未婚で恋人がいない男女に、「恋人は欲しいか」と聞いたところ、37.6%が「欲しくない」と答えている。その理由について、「恋愛が面倒」(46.2%)、「自分の趣味に力を入れたい」(45.1%)という答えが多かった。
たしかに、恋愛は面倒なものだ。相手に振りまわされもするし、お金も時間もかかる。しかも、恋愛にはたいてい終わりが来て、多かれ少なかれ痛手を負う。それでも、性懲りもなく恋愛に飛び込んでしまうのは、人を愛し、愛されるという喜びがあるからだ。人間の脳に仕組まれた本能でもある。
ぼくたちの脳の視床下部という部位には、爬虫類以上の生き物が獲得してきた本能の中枢がある。そこでは、「食べたい」「寝たい」「セックスしたい」「戦って勝ち抜きたい」という、生きるために必要な本能を司っている。だから、どんな聖人君子や淑女だって、セックスに無関心ではいられない。
あのナポレオン・ボナパルトは軍人や政治家として膨大な仕事をこなしながら、寸暇を惜しんでセックスをしたといわれている。愛人にはベッドでスタンバイさせ、仕事が一段落すると飛んでいった。独特の性癖もあったようだ。戦場から帰るときには、妻ジョゼフィーヌに宛て、「これから帰る、風呂に入らないように」と手紙を送ったらしい。においフェチである。
女性では、エカチェリーナ2世が有名だ。34年間、ロマノフ朝ロシアに君臨し、壊れかかった財政を立て直し、領土を広げた。仕事もよくやったが、同時に多くの男性と関係を持ったという。マッチョでイケメンの若い男が好きだったようだ。
プロゴルファーのタイガー・ウッズもまた、多くの女性との刺激によって、トーナメントで勝ち抜いていった。勝負に勝つと、脳内に快感ホルモンのドーパミンが分泌される。この快感を得たいために、彼はさらに技術を磨き、強くなっていく。
同時に、「セックスしたい」という隣接する本能も刺激して、セックスにものめり込んでいった。しかし、それは長続きしなかった。「英雄色を好む」などと、おおらかに受け入れられる時代だったらよかったが、あまりに無軌道だったため、世間からたたかれた。