影の総理といわれる菅義偉・官房長官が自らについてメディアに語ることは、ほとんどない。長く取り組んできた沖縄問題について、菅氏はいま何を考えているのか。ノンフィクション作家の森功氏がSAPIO連載「総理の影 菅義偉の正体」の中でインタビューした。
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折しも、安全保障法制の国会審議が佳境を迎え、前日には米軍基地問題のために沖縄県知事の翁長雄志との会談を済ませたばかりのタイミングだった。いきおいインタビューの話題は、沖縄の基地問題からとなった。
──普天間飛行場の辺野古移設は進展したか。
「翁長知事は移設反対で知事に当選したのですから、そこは急には、非常に難しいのではないですかね」
菅は沖縄問題に思い入れが深い。二〇一二年十二月に第二次安倍晋三政権が発足して以来、官房長官を務めてきた菅は、現在沖縄基地負担軽減担当大臣を兼任している。前知事の仲井真弘多とは、二人三脚で米軍普天間飛行場の辺野古移設と沖縄振興策を進めてきた。が、基地移設反対の翁長知事になり、大きな誤算が生じている。
基地移設交渉は暗礁に乗り上げ、仲井真時代に進めたカジノを中心とするIR(統合型リゾート)計画も白紙撤回された。さらにもう一つ、菅自身が沖縄に誘致しようと働きかけてきたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)についても不安が残る。
──カジノやUSJは、米軍基地移設容認のバーター取引の中で考えられてきたのではないか。カジノ計画が消えれば、集客や採算面から、USJも白紙撤回とならないか。
「(今度の)翁長知事との話し合いでは、USJの話は出ませんでした。ただ、沖縄の振興のためには必要だと思いますので、翁長知事としても、USJは大歓迎でしょう。そこは、国としても応援しようということです。
沖縄振興と基地問題は、リンクしているわけではありません。沖縄振興では、第一に狭くて満杯の今の空港を何とかしてほしい、第二滑走路をつくってほしい、と要請がありました。当初は滑走路の完成まで七年ほどかかるといわれていたところを、仲井真さんとの信頼関係から五年十カ月にまで短縮できた。
USJはたまたまそのあとに出てきた話です。もともと大阪の次に進出する地域として、USJが場所を探していて、九州と沖縄を候補地としていました。それを私たちが聞きつけたのです。で、USJの関係者に官邸に来てもらって、沖縄であれば様々な支援は可能であると話をした。それが始まりです」