5000万件にのぼる「宙に浮いた」年金記録問題を引き起こした旧社会保険庁。そこから出直しを図ったはずの日本年金機構だったが、大量の個人情報の流出など相変わらず問題を繰り返している。そして最近では「年金を払い過ぎたから返してくれ」と、ある日突然受給者に要求してくる事態が頻発している。しかもその額は数百万円に上るケースもある。
本誌が年金機構の資料を集計した結果、過払いは2013年度598件(約4億9000万円)、2014年度716件(約4億7000万円)など5年間合計で2162件、約18億2000万円に上った。1人あたりの返還請求平均額は約80万円だ。
社会ではミスを起こしたら「ミスをした側」が責任を取るのが筋だ。しかし年金の場合は、ミスをした側の尻拭いをなぜか我々受給者がやらなければならない。日本年金機構の広報担当者はこう語る。
「こちらのミスですから電話連絡を差し上げたうえで職員が訪問し、謝罪と説明を直接行ないます。訪問は困るという方や、連絡が取れない場合には返納通知書を送付します」
しかし「返さなくて良い」という結論にはならない。
「現金による一括返納をお願いしますが、困難な場合は生活状況に応じて分割返済や年金からの差し引き調整を選択できます。返納期限は5年ですが、それでも厳しい場合には最長10年に延長可能です」(同前)
しかも返納義務は、年金受給者が死亡した場合でも子や孫、兄弟姉妹など法定相続人が負うことになる。相続を放棄しない限り決して逃げられないのだ。