見た目はお腹の出たオッサンだけど、踊ると度肝を抜く軽快なパフォーマンスを見せる――そんな姿が印象的なのは、ダンサーで芸人の芋洗坂係長(47才)だ。かつてはお笑いコンビを結成していた彼に、売れない時代のエピソードを聞いた。
――芋洗坂係長のキャラクターは、どうやって生まれたんですか?
芋洗坂:テンションというコンビを休止して1人になった時に、一番最初に作ったのが、サラリーマンの1日、朝起きてから夜寝るまでを、全てリズムでパフォーマンスしたものでした。ひとつの部署が舞台になっていて、その会社の中の名前を全部、東京の坂の名前にしようと思って。
ぼくがショーパブで働いていた頃に、芋洗坂を通って出勤していたのと、自分には芋って漢字が合うかなって。道玄坂とか格好よすぎるなと思って、芋洗坂。そして役としての役職が係長だったので、芋洗坂係長になりました。その時の作品も、自分の中で大事にしたかったし、その時に作った芋洗坂係長というキャラクターが、自分にフィットしていて。ネクタイが短いのは、お腹を強調させたいからです(笑い)。
40才でR-1グランプリを受けようとなった時、そのキャラクターを思い出したんです。本名の小浦一優という名前で出るのが恥ずかしくて、フィルターを1枚入れたんですね。昔お笑いをやっていた時代を知っている人に、R-1グランプリを受けていると知られて、1回戦で敗退してしまったら、恥ずかしいなと思って。それで業界的にも誰も知らない名前で出ようと思ったんです。
――20才の頃は細くて、田原俊彦さんや中森明菜さんなどのバックダンサーをしていたのに、なぜお笑いに転向したのですか?
芋洗坂:テンションでデビューしたんですけど、東京で初めて働いたショーパブで、同年齢で同郷の田口浩正君と出会って、仲良くなったんです。彼は役者をしながら映画監督を目指していて、ぼくはミュージカルとか舞台をやりたいという夢があって。
食べていくためのアルバイトをしていたんですが、芸につながる仕事を見つけなきゃね、という話をしていた時にホリプロのお笑いライブがあったんです。そこで田口君とコンビを組んで出場して、新人コーナーで優勝したんですね。それからテレビの仕事をいただくようになりました。
――田口浩正さんをライバルとおっしゃっていますよね。