安倍晋三首相は就任以来、側近官僚たちと進めた看板政策の一つが、「地球儀外交」だった。中国、ロシア、北朝鮮などとの長年の懸案を解決に向けて動かすと意気込んでいたが、側近たちのチームワークは崩壊し、決して芳しい成果をあげられているとはいえない。
そこで本誌は伝統企画・覆面官僚座談会を緊急招集した。出席者の財務省中堅A氏、経産省中堅B氏、外務省若手C氏、文科省若手D氏に安倍政権の外交について語り合ってもらった。
──対中外交では、安倍首相は9月3日に北京で行なわれた「抗日戦争勝利70年記念式典」に合わせて計画されていた中国訪問をドタキャン。その経緯はあまりに不自然だった。中国は今年から9月3日を「抗日戦争勝利記念日」として祝日に決め、軍事パレードなど記念行事を行なうことにした。そして安倍首相を招待してきた。当初、首相は訪中しないという見方が強かったが、戦後70年談話を出した後、首相はその気になっていた。
毎日新聞(8月18日付)が〈首脳会談へ 9月3日午後訪中 中国側と最終調整〉と、軍事パレードが終わった後に北京に入るという日程を報じ、首相側近の萩生田光一・総裁特別補佐も「この時期に北京を訪問できるなら結構なことだ。(訪中は)式典とは切り離したほうがよい」と訪中ありうるとの見通しを語っていた。
文科D:中国が「日本に勝った」と祝っているときに総理が訪中するのは、“飛んで火に入る夏の虫”になるリスクがあったのではないでしょうか。タカ派の安倍総理がなぜ、そんな時期の訪中に傾いたのか疑問でした。
財務A:その根回しに動いたのが親中派の二階俊博・自民党総務会長と官邸の今井尚哉・総理首席秘書官(経産省出身)ライン。官邸は事前の交渉に首相ブレーンで外務省出身の谷内正太郎・国家安全保障局長を訪中させ、中国側は李克強・首相との面会をセットする演出までして総理を誘い出そうとした。今井さんの背後には中国との関係改善に積極的な経済界、その意を受けた経産省の思惑があった。そうでしょう、Bさん。