中国の上海株式市場での暴落が8月下旬の世界同時株安の大きな原因になったことを受けて、中国指導部内ではこの問題の責任を問う声が出ており、経済政策担当の李克強首相の辞任説が急浮上してきたことが分かった。
英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」が「李首相に解決しにくい課題が与えられるため首相交替説は常にあった。いま李首相を交替するのは非常に危険だが、2017年の党大会で体面を保たせながら退任させる可能性がある」とのシドニー大学のケリー・ブラウン中国研究センター所長の発言などを引用して報じた。
李首相は8月29日、経済情勢に関する会議で「(中国の)経済運営は新たな圧力にぶつかっている」と厳しい現状認識を示し、中国政府の経済政策がうまく機能していないことを暗に認めた。
そのうえで、李氏は「最近の国際市場の混乱は世界経済の回復に不確定要素を与え、中国の金融市場や輸出入への影響が強まっている」と分析し、中国の今後の経済運営は難しい局面を迎えるとの見通しを示しながらも、「ことしの経済目標を達成する」と強調した。
しかし、市場は李首相の経済運営に極めて懐疑的で、李首相が掲げている今年の国内総生産(GDP)成長率である7.0%の目標実現は、景気の減速などで達成を危ぶむ声も出ている。
李首相の経済運営に疑問符が付きだしたのが、8月下旬の世界同時株安だった。上海株価指数が8月下旬の3日間で22%も下げて3000を下回り、2月上旬の年初来最安値の3049をも割り込んでしまった。6月12日に記録した5200の最高値から、わずか70日あまりで2200ポイントも落ち込んでしまったのだ。それまで、中国政府は6月から2000億ドル(約2兆4400億円)もの資金をつぎ込んで、下落する株式を買い支えようとしたのにだ。
このため、李首相の経済運営に市場ばかりでなく、中国指導部でもその手腕に疑義を差し挟んだ。