“日本最大の暴力団”山口組の分裂が明らかになった。いま最も恐れられているのは分裂による抗争が起きるかどうかだ。日本でもっともヤクザに詳しいライター・鈴木智彦氏が、その可能性について各方面からの情報を基に分析する。
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かなり早い段階で、山口組からの離脱組は自分たちの大義を新聞社経由で発表したがっていることが分かった。抗争になれば大義名分が不可欠になる。
現実には強い者の言い分が筋で、最終的に暴力の勝負とはいえ、離脱という大罪を背負った側は、その理由を喧伝しなければならない。というのも暴力団には「親分が絶対」という建前があり、これをひっくり返すのは難儀なのだ。
だからクーデターの大半はトップが死に、または引退し、親分・子分の疑似血縁制度の縛りが消滅した時に表面化する。その点、今回のクーデターは、極めて異例だ。
「一和会のほうがまだマシだ。今回はみなが司忍六代目と縁を持っている。なにを言ったところで、大義なき逆賊だろう」(山口組二次団体幹部)
1981年に田岡一雄三代目が病死して以降、跡目を巡って勃発した山一抗争(※注)とは、ここが決定的に違う。ヤクザ的な物差しでは、離脱組は明らかに不利なのだ。
【※注/1984年に竹中正久が四代目を襲名したことに反発した反竹中派が「一和会」を結成。竹中組長は一和会に殺害されたが、山口組の報復が激化。1989年の終結までに双方で25人もの死者を出した】
抗争の可能性は極めて高い。暴対法も暴排条例もヤクザのメンツの前には意味がない。確信しているのには理由がある。山口組関係者からかかってくる電話は、明らかに変化している。