訪日外国人客数が今年上半期、過去最高を記録した。急増する彼らを受け入れるために、大前研一氏が付け焼刃のいわゆる「泥縄」ではない、地に足のついた対応を提案する。
* * *
日本政府観光局の統計によれば、今年1~7月の訪日外国人客数(推計値)は前年同期比46.9%増の1105万8300人に達し、過去最高を記録した。国・地域別ではトップの中国が前年同期比113.8%増の275万5500人、2位の韓国が41.7%増の216万3100人、3位の台湾が29.0%増の215万4300人で、いずれも過去最高となった。このままいけば年間では1900万人ペースとなり、2000万人を超える可能性もありそうだ。
政府は東京五輪が開催される2020年に2000万人、2030年に3000万人超に増やすという目標を掲げているが、私は以前からビザなどを緩和すれば3000万人突破はさほど難しくない、と指摘してきた。それが予想以上に早く視野に入ってきたと言える。
ところが、政府や地方自治体の対応は相変わらずの“泥縄”だ。新国立競技場をはじめとする東京五輪の準備も含め、すべてが後手後手に回っている。しかし、この「想定外」の事態には、もっと真剣かつ早急に対策を講じなければ大変なことになると思う。
この先、訪日外国人客が年間3000万人になった時は、おそらく中国人だけで1500万人を超えているだろう。今の3倍というすさまじさだ。パッケージツアーの団体客が中心の中国人が1500万人以上になったら、ホテルもバスも全く足りなくなる。
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、今年5月の客室稼働率が東京都のシティホテルは83.4%、ビジネスホテルは83.2%、大阪府のシティホテルは86.9%、ビジネスホテルは85.4%に達している。これは東京と大阪のホテルが、連日ほぼ満室状態になっているということだ。
冬季の札幌市内のホテルも同様で、予約を取るのが至難となっている。ホテルは客室稼働率が85%を超えると人手が足りなくなってサービスの質が低下すると言われるが、すでに東京や大阪などではその領域に入っているのだ。