気管支喘息は、気道に炎症が起こり、咳や喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などの症状が出る慢性病だ。日本人の発症原因は、家ダニアレルギーが70~80%と最も多い。1990年代半ばまでは、喘息による死亡者が年間約数千人もいたが、吸入ステロイドの登場で急減した。
しかし、その後の大規模な臨床研究で、吸入ステロイドは優れた対症療法薬だが、止めると症状がぶり返すことが報告された。そして、ついに今年、根本治療のダニアレルゲン免疫療法薬が保険承認された。
埼玉医科大学病院アレルギーセンターのセンター長・永田真教授に話を聞いた。
「アレルゲン免疫療法は、欧米では以前から広く行なわれています。日本はアレルギー専門医育成が遅れ、治療できる専門医が少ないことも導入が遅くなった原因の一つです。ダニアレルゲン皮下注射薬が臨床で使えるようになった今年は、日本における免疫療法元年といえます」
気管支喘息の治療には、濃度の低いダニアレルゲンを週に1~2回、量を増やしながら、約半年間で20~30回注射する。効き目が出る維持量まで達したら、月に1回の注射で3年以上を目安に継続する。注射により、アレルギー反応を抑える制御性T細胞を活性化させ、IgE抗体の働きを妨げる阻止抗体IgG4抗体が産生されて体質改善する。
現実には約半年間、毎週通い続けるのが難しい患者も多いので、この施設ではラッシュ法(急速飽和法)を行なっている。5泊6日の入院で徐々に濃度を上げながら、1日数回注射するもので、入院後、すみやかに効果が現われる。退院後は毎月1回、維持注射を継続する。治療導入期間を短縮するだけでなく、確実に高い効果が得られる。
この治療を行なうと70~80%で症状が緩和するなど、何らかの改善がみられ、約30%の患者は薬から解放されている。