かつて『野猿』などのスタッフを巻き込んだ内輪ネタを流行らせたのも、存在感の小ささを自覚した横並び意識からではないか。近年は時代の流れを読んでか、内輪ネタを減らして後輩芸人との絡みを増やしているが、横並びのような立場でじゃれ合う姿は変わっていない。とんねるずには、年齢や立場を問わず、タレント、スタッフ、視聴者を自分たちの世界に巻き込む引力があるのだ。
人気が落ちないもう1つの理由として、独特の“緩急”を挙げておきたい。もともとボケとツッコミの区別がない2人だが、役割の差は明確。トークを回す“勢いの司令塔”石橋と、それにゆったり反応する“間のプレーヤー”木梨(憲武)という役割の緩急があり、番組が一本調子になりにくい。また、他の芸人よりも緩急の度合いが大きいから、とんねるずの番組はどんなテーマでも内容がわかりやすいのだろう。
最後にエールの意味を含めてふれておきたいのは、とんねるずを取り巻く期待感。「男気のあるとんねるずなら、『元気がなくなった』と言われるテレビ界に再び勢いをもたらすような大暴れをしてくれるのではないか」と期待している人は多い。2人に期待するのは、バラエティー番組にブレーキをかけるコンプライアンスやネット炎上を完全無視の大暴れ。とんねるずには、「大物」「レジェンド」よりも、「ヤンチャな兄貴」というイメージのほうがしっくりくるのだ。少なくとも、『笑っていいとも!』終了後の“タモロス”に続く、“とんねるロス”にならないように番組は続けてほしい。
【木村隆志】
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。テレビ番組への出演や連載コラムを重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動している。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超える重度のウォッチャー。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』(TAC出版)など。