さる8月30日の安保法制反対国会前デモ参加者数は数万人に膨れあがった。主催者は「約12万人」、警視庁は「約3万3000人」と発表し、海外メディアも英国BBC、米国CNNはトップニュースで大きく報じた。
大新聞の国会デモの扱いは社によって大きく違った。安保法案反対論の朝日、毎日、東京各紙は翌日朝刊1面でデモの空撮写真を大きく使い、社会面でも参加者の声を報じたのに対し、法案推進論の読売は第2社会面に控えめに載せた。テレビの報道番組の司会経験が豊富な国際ジャーナリスト・小西克哉氏(国際教養大学客員教授)はその紙面の落差に驚いたという。
「新聞社によって主張や記事の扱いに違いがあるのは健全なことです。しかし、読者に現実を見誤らせるような報道はあってはならない。法案に反対する何万人もの国民に議会が囲まれたという事実は十分大きなニュースであり、海外のメディアも配信した。
それに対して読売や産経の扱いは過小評価すぎるのではないか。とくに読売が数万人の反対デモと、新宿で行なわれた安保法案賛成派のデモに500人集まったという記事を同列に扱っているのを読んで思わず椅子からズリ落ちました」
産経は紙面では第2社会面で取り上げ、〈学生団体「シールズ」とは〉とデモの中心となった学生組織に共産党が接近していることや、他の左派グループと衝突があることに焦点をあてて報じたが、異彩を放ったのはネット版のニュースだ。デモの空撮写真を分析し、国会正門前のデモ参加者が多くても3万2000人程度だったと独自に試算。「主催者が発表した12万人にはほど遠い」と“警察発表の勝利”を報じた。
それだけではない。9月3日付では安倍首相とパイプが太いとされる阿比留瑠比・論説委員がコラムで、
〈主催者発表では約12万人だが、産経新聞の試算では3万2千人程度の参加者にとどまるこのデモが、どうしてそんなに重視されるのか〉
〈チベットやウイグルで反中国政府のデモをするのとは異なり、弾圧も粛清も絶対にされない環境でデモをすることが、そんなにもてはやすべきことなのか〉