中国のバブル崩壊は、対岸の火事では済まない。ビジネス面でも貿易面でもつながりを持つ日本に、火の粉が降りかかる。経済評論家の三橋貴明氏が解説する。
* * *
中国の習近平政権は「人民元の国際化」を国家戦略に掲げ、国際通貨基金(IMF)に特別引き出し権(SDR=加盟国が外貨不足に陥った場合、救済のため外貨を受け取れる権利)の構成通貨として人民元を採用するよう求めてきた。
経済減速が進むと、景気刺激策として人民元を切り下げるというのが中国の今までのパターンではあった。だが、今回は人民元国際化の国家戦略を優先して、さすがに切り下げは断行しないと見ていた。
ところが、中国政府は8月11日から大幅な人民元の切り下げを繰り返したのである。これは人民元の国際化よりも、目の前の景気対策を優先したということに他ならない。それほど共産党政権が輸出減少や内需低迷による成長鈍化に強い切迫感を感じており、輸出競争力を高めようと目論んだのだ。
この問題は日本へも影を落とす。まず訪日中国人の「爆買い」が止まる可能性が高い。 日本政府観光局によると、今年1~7月の訪日中国人は前年同期比114%増の約276万人に達した。中国人の日本での旅行消費額も同約2倍に伸び、1人あたり25万円近くになっている。
爆買いの恩恵を受け、家電量販店のラオックスは大幅な増収増益となり、純利益に至っては前年同期比79倍増を達成した(2015年6月期中間)。また、三越伊勢丹ホールディングスも大幅増益。他の大手百貨店も軒並み好調だ。中国人の爆買いに歯止めがかかれば、これまでそれに依存して業績を拡大していた日本の小売業、旅行業に関連する多くの企業はダメージを受けることになる。