アイドル全盛時代の1980年代にトップアイドルとして君臨した河合奈保子。1996年に結婚を機に芸能活動を休止したが、今でもファンに愛され続けている王道アイドルだ。今年でデビュー35周年となる河合奈保子の魅力について、社会学者の太田省一氏が解説する。
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キャンディーズ、ピンク・レディー、山口百恵らが引退し、次世代のスターが渇望されていた1980年、日本レコード大賞の新人賞に選ばれたのは田原俊彦、松田聖子、そしてこの年デビューしたばかりの河合奈保子だ。アイドル黄金期の幕開けだ。
1980年代のアイドルには松田聖子のようなブリっ子タイプと、中森明菜のように男性に媚びないようなタイプがいたが、河合奈保子はそのどちらにも属さなかった。それでも、無数のライバルがいた時代にトップアイドルとして君臨し続けられたのは、アイドルとしての素養がすべて備わっていたからである。
圧倒的な歌唱力。童顔で抜群のプロポーション。バラエティ番組に出演しても余計なことを話さない純朴さ。数多のアイドルが私生活を暴露される中にあって、スキャンダルとも無縁だった。ファンを決して裏切らない安心感こそが河合奈保子の人気を支えていた。
第一線で活躍し続けるのが難しいアイドル界にあって、松田聖子はずば抜けた歌声と、スキャンダルをも逆手にとり飛躍し続ける。一方、学生時代からピアノ、ギター、マンドリンなどの楽器に慣れ親しんでいた河合奈保子は、大ヒット曲『けんかをやめて』を作曲した竹内まりやの影響を受け、シンガーソングライターとしての才能も開花させていった。
1996年、結婚を機に芸能活動を休止。時を経ても愛され続ける理由は、アイドルの王道を踏み外すことなく歩み続けたからにほかならない。
◆河合奈保子(かわい・なおこ):1963年7月24日生まれ。大阪府出身。1980年「HIDEKIの弟・妹募集オーディション」で優勝し、同年『大きな森の小さなお家』でデビュー。日本レコード大賞新人賞を受賞。翌年『スマイル・フォー・ミー』でNHK『紅白歌合戦』に出場するなどトップアイドルとなり、計36曲のシングルをリリース。1996年の結婚を機に活動を休止した。8月にアルバム『私が好きな河合奈保子』が日本コロムビアより発売された。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号