鳴り物入りだった伝統枠のドラマを作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が総括した。
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「月9で純愛ものを復活!」と、大々的な宣伝とともに始まった夏ドラマ『恋仲』(フジ系月曜午後9時)。注目の中で幕を閉じたが、その成果はどうだったのだろうか?
『恋仲』の主人公は、三浦葵(福士蒼汰)と、初恋の人で幼なじみ・芹沢あかり(本田翼)。そこに、同級生だった蒼井翔太(野村周平)が加わった、いわば三角関係の物語。あかりは気持ちが固まらず、男子2人の間で揺れる。どちらを選ぶか悩み続ける。視聴率は最初一桁で始まり、最終回(9月14日)はなんとか二桁台にのせ11.5%で着地した。
「ハラハラ、ドキドキが少なかった」「苦しくて胸が焼かれるような気持ち、一人涙をこぼすといった恋愛の緊張感がもの足りなかった」「胸キュンシーンが少なかった」などと、40代より上の世代からは手厳しい声も聞こえてくる。
たしかに、「メリハリある」恋愛ドラマを堪能し自らも恋愛の高揚感と修羅場を味わってきた中年以上の世代には、平板で物足りないドラマに映ったのかもしれない。ぱっとしない視聴率、辛口の感想。では、『恋仲』は本当に、「失敗作」だったのだろうか?
●「さとり世代」から考える
ちょっと考えてみたい。主人公の年代である20~30代は、「さとり世代」と命名されている人たち。結果をさとっているから高望みしないという意味あいで、その特徴は、「モノを買わない」「酒を飲まない」「海外旅行をしない」「車に興味がない」「恋愛に淡白」。他の世代と比べてずいぶん感覚的な違いがありそうだ。
こんな数字もある。
20~30代の独身男性で「交際相手がいない」と回答した人は75%(オーネット調査2011)。内閣府の調査でも、未婚男女で「恋人が欲しくない」と答えた人は37.6%。理由は、「恋愛が面倒」が46.2%。「自分の趣味に力を入れたい」45.1%、「仕事や勉強に力を入れたい」32.9%、「恋愛に興味がない」も28%いた。
「さとっている」ので、ヤケドするような行動は回避する。事前に詳細の情報を収集するから、気持ちは過剰に燃え上がらず、静かにシュリンク。冒険心も未知への挑戦心も、行動する前に萎える世代。
その分、仲間の輪を大事にし、必要以上に自己主張はしない。「個」を突出させない行動につとめているとすれば……。
「恋愛」に対しても、そうそう積極的になれるはずがない。むしろ、その一歩手前でウロウロするような逡巡ぶりが、フィットするのでは。
『恋仲』の主人公・あかりは、なかなか気持ちも固まらないし、二人の男性も激しく競い合い彼女を奪うといった肉食の影は薄い。そんな『恋仲』の風景こそ、「さとり世代」にとって等身大の「マイルド」恋愛模様を映していた--そう言えるのかもしれない。
●新しい視聴スタイルの開拓
今回、ツイッターをしながらドラマを見る“ソーシャル視聴”が話題を集めた。一人でいるけれど、常に誰かとつながり、ちょっとした感想をやりとり。一人ぼっちでも充実している「ぼっち充」と、ドラマ『恋仲』とはいわばコインの裏表であり、相性がよかった。
斬新な試みとして、最終回は一部「LIVE」で放送され、ドラマ初の試みとしてツイキャスも配信。生放送部分にはサプライズゲストとして指原莉乃がチラっと出てきて話題を集めた。実際、ラスト10数分でコメントが2万以上集まり、ツイキャス配信も一時パンクしたとか。
新しい視聴スタイルを何とかドラマに組み込もうとした意欲は、評価したい。