〈7回を無失点に封じ、大事なこの時期に4戦4勝。素晴らしい先発投手である。頭でそう理解しても、心が震えない。エースって何なんだろう。試合はつくっても決着は救援陣にお任せ。チームの命運を背負う覚悟が伝わらない投球に、その称号がしっくりこない〉
この書き出しで始まる、中国新聞朝刊(9月15日付)のコラムが波紋を広げている。タイトルは『エースって何なんだろう』。地元広島カープ投手、マエケンこと前田健太(27)について論じた記事だ。
抑えの中崎翔太(23)が前日まで5連投しているにもかかわらず、93球で降板したエースとしての姿勢を「抑えも大変な状況を見れば、完投しろとまではいわないが、せめて8回まで踏ん張ってほしかった」としている。
今季の前田はすでに13勝。登板した26試合のうち23試合で「クオリティスタート」(先発として6イニング以上投げ、かつ3自責点以内に抑えること)を達成している(9月21日時点)。数字だけ見れば合格かもしれない。
だが、記事からは納得いかないという思いが伝わってくる。広島を球団史上初のリーグ優勝に導いた元監督で、東京国際大学野球部監督の古葉竹識氏の話。
「確かに我々の時代は、いいピッチングができていると『最後まで投げさせてください』と本人が志願したものだし、ベンチもファンも投げさせるのが当然だと思っていました。エースとは『この人が投げたら絶対に負けないぞ』と思わせてくれる投手。完投・完封で相手チームを圧倒してほしいという願いは、いつの時代も変わらないのでしょう」