アイドルが本を出版するというとまず思い浮かぶのは写真集、ブログなどをまとめて写真に少しだけ文章をつけたフォトブックなど。ところが、最近はベストセラーになった『逆転力 ~ピンチを待て~』(指原莉乃著)のように、アイドルだって文字ばかりの書籍も出版します。初の単著『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー社)出版にあたり、アイドルでライターの姫乃たま氏が遭遇した驚くべき出来事を振り返ります。
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自分の単行本『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』を、出版社からいち早く受け取って帰宅し、少し得意げに両親に見せると、真っ先に「ゴーストライターってどんな人?」と目を輝かせて聞かれ、この人達はなんて恐ろしいことを言うのだろうとおののきました。
それもこれも1984年にフジテレビ系列の生放送番組「オールナイトフジ」で、松本伊代さんが自著である『伊代の女子大生 まるモテ講座』について、「私もまだ読んでないんですけど」と発言し、笑いと話題を呼んだためだと思われます。そして私は、今でもアイドルの本は他人が書いているという考えが世の常識であることに気が付きました。
実際に活動してみると、最近のアイドルは知名度の差を問わず、ブログを始めとするSNSに文章を書くことが仕事の一環となっています。これまでのアイドル史の中でも、最も執筆行為と密接な関係にあるのです。
現在でも多忙なアイドルの書籍では、他者が取材をして書き上げる口述筆記の方法がとられていますが、AKB48を卒業した仲谷明香さんは『非選抜メンバー』(小学館101新書)を自らの手で書き上げたことが話題になりました。「非選抜メンバー」と言えど、AKB48のメンバーですら自分で書いているのに、無名の地下アイドルである私がゴーストライターにお願いできるわけが(予算的にも)ありません。
私は『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』を出版するまで、タイトルの通り地下のライブハウスで歌いながら、自分の活動をブログやSNSでひっそりと広報し続けてきました。途中で、熱心なファンの方以外にもブログを読んでもらうためには、文章をきちんと書く必要があることに気が付き、さらにアイドルファンでない人も読めるように専門用語や、近しい人にしかわからない話題は極力避けるようになりました。
そうするうちに雑誌やネットメディアから連載の依頼をいただき、その延長として書籍を出版するに至ったのです。