安保法案の成立によって、世界各地の紛争が現実問題として日本人に迫ろうとしている。我々は今後、未知なる世界とどう向き合うべきか。新刊『あぶない一神教』(小学館新書)の共著者である社会学者・橋爪大三郎氏と元外務省主任分析官の佐藤優氏による特別対談をお届けする。
佐藤:日本はこれまで体験しなかった未知の問題に直面しています。それは、キリスト教世界とイスラム教世界との対立です。安保法案の成立によってその争いに巻き込まれることになれば、我々自身の問題にもなるでしょう。
しかし日本人は、「イスラム国」問題なら「イスラム教は一神教だから不寛容で、日本は多神教だから寛容だ」という自分たちが理解できる安易な論理に落とし込もうとして、本質を見抜こうとしない。
橋爪:同感です。未知なるものに出会うと、人間はまず驚き、次にこれまでのものの見方を点検します。いままで通りでいいのかと。
佐藤:しかしそのプロセスが欠落した人が多いのが問題です。
橋爪:未知との出会いは、自分が新しいステージに向かうチャンスでもある。まず、相手を理解するのが大事。それは、相手の目で自分を見ることを含む。そして世界を定義しなおし、自分になにができるか、なにをすべきかと考える。