「日本全国の寺院のうち、35.6%が消滅の可能性がある」(鵜飼秀徳著、日経BP社刊『寺院消滅』より)。今、日本全国の寺が困窮にあえいでいる。3人の現役僧侶が、その実情から葬式にまつわるお金の話まで語り合った。
〈今回はそれぞれ自らの寺院を持つ住職・副住職たちが一堂に会した。甲信越地方の浄土宗の副住職A(43)、関東地方・曹洞宗の住職B(50)、そして北陸地方の臨済宗の住職C(35)が、匿名を条件に「坊主のホンネ」を語る〉
──お寺にとって“繁忙期”である彼岸が過ぎました。いかがでしたか。
浄土宗A:昔は1日に何件も法事があり、目が回るほど忙しかったと聞きますが、最近は檀家が減ってきているので、ここ数年はすっかり暇ですね……。
「体の自由が利かなくなった」とか「墓守りをする親類や子供がいない」などという理由で、先祖代々の墓を処分して永代供養墓に合葬する「墓じまい」をするケースが増えました。
臨済宗C:ウチは檀家数が約150軒と少ないんですが、ここ2年でさらに5軒減少しました。墓を移転することを改葬というのですが、子供の住んでいる都心に、自分が引っ越すのと同時に改葬する人が多い。「墓じまい」と「改葬」で、田舎はダブルパンチに見舞われている状況です。
〈地方で檀家が少ない寺は、僧職だけでは食べていけないため、兼業する人が多い。浄土宗の機関誌『宗報』の2014年6月号に掲載された過疎地の寺へのアンケート調査結果によると、現在の兼業住職の割合は5割以上にのぼるという。また、前掲書の『寺院消滅』によれば、浄土宗本願寺派の寺院の約45%が年収300万円以下にすぎないというデータもある〉