1920年に出場4校で始まった箱根駅伝は、90回以上の歴史の中で数々の名場面を生み、今や新年の国民的行事となった。中でも近年、「最大の見どころ」といわれるのは、天下の険・箱根に挑む「山登りの5区」だ。
2006年に最長区間となって以降、各校は5区にエースを投入し、驚異的なスピードでライバルをごぼう抜きする「山の神」が誕生した。ところが箱根駅伝の華と呼ばれる山登り、来年の大会では中止の危機に瀕している。20年間欠かさず箱根に足を運んでいる駅伝ファンが明かす。
「例年通り、箱根に投宿して母校の往路ゴールと復路スタートを見届ける予定で、今年の箱根が終わった時点で来年の宿も予約しました。でも先日、確認の電話をしたところ“開催する、と思いますけど……”と歯切れが悪いんです」
5月6日、気象庁は箱根山で火山活動が高まり、大涌谷火口周辺に影響を及ぼす噴火の可能性があるとして、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。
6月29日には箱根駅伝ファンで知られる元千葉ロッテマリーンズ・里崎智也氏がツイッターで、〈噴火警戒レベル2が年明けまで続いた場合、お正月の風物詩・箱根駅伝は行われるのだろうか?〉と憂慮した。
里崎氏の不安は的中する。その翌日、大涌谷で小規模な噴火が発生したとして、気象庁は警戒レベルを3(入山規制)に上げたのだ。
これを受け、箱根町役場は大涌谷周辺の半径およそ1kmの範囲に避難指示を発令した。スポーツ紙デスクが言う。
「このとき、“これじゃ駅伝できないんじゃないか?”という話が出た。正月の箱根がなくなるのは異常事態ですから、大会関係者に取材する記者も多かった。“内々では中止が決まった”という噂まで飛び出して大混乱になった」