ヨーロッパの難民受け入れを「美談」と報じるメディアは浅はかだ、と作家の落合信彦氏は警告する。難民たちを乗せたボートがトルコ沖で転覆し、3歳男児を含む12人が死亡した。浪打ち際でうつぶせになっている3歳男児の遺体写真をきっかけに欧州各国は難民受け入れを拡大する方向に急転回したが……。落合氏は以下のように考える。
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祖国を追われ、溺死した男児は本当に気の毒だ。しかし、悲劇はいまに始まった話ではない。今年4月にはリビア沖で約700人の難民を乗せた船が転覆し、そのほとんどが死亡した。8月初めにも同じくリビア沖で難民600人乗りの漁船が沈没、200人以上が死亡している。全長5~6mのゴムボートに20人以上も乗せられ、荒波のなか漕ぎ出すケースも多い。
オーストリア東部では、放置された冷凍トラックから難民71人の遺体が発見された。難民たちは密航斡旋業者によってトラックに詰め込まれ、酸欠や脱水症状で死んだのだ。その中には子供4人も含まれていた。
流れ込む難民を一時的に止めるには、まず密航斡旋業者を探し出して刑に処するべきではないか。あるシリア人は彼らに40万円支払ったという。小さな船に難民を乗せて、到着地に近づいたら、彼らは自分たちのボートで逃げる。彼らこそ人殺しだろう。
混乱と悲劇の責任の一端は、ヨーロッパ側にもある。
難民がヨーロッパを目指すのは、加盟国の間では国境検査なしで移動できる「シェンゲン協定」があるからだ。同協定は1985年、ベルギー、フランス、ルクセンブルク、オランダ、当時の西ドイツの5か国が署名したことから始まった。その後、1997年に調印されたアムステルダム条約でシェンゲン協定がEUに取り入れられ、加盟国が26か国に増えて現在に至る。