今回の朝ドラの出来はどうか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏の現時点での答えは「期待できる」というものだった。
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NHK連続テレビ小説『あさが来た』が、いよいよスタート。第1週目の平均視聴率は20.3%と、まずまずの好発進とか。前作の『まれ』は、正直に言って、毎朝見続けることが辛かった。脚本も演出も役者も、ほころびばかりが目に入ってきてしまい、ほとほと困った。それだけに、後に続く作品は何を見てもほっとしてしまう。そんな「皮肉な」アドバンテージも、無くはない。
とはいえ、『あさが来た』が持つ独自の魅力もじわりと伝わってくる。これから半年間、どんな風にその魅力を見せ続けてくれるだろうか? 途中で低空飛行に陥ることなく、視聴者を引っ張り続けてくれるか? この作品が期待できるドラマである理由を3つ、あげてみたい。
●理由その1 主役の安定感と輝き
ヒロイン・あさを演じている波瑠は24歳。若い女性特有のキラキラした瞳、活気、透明感がある。でも、面白さはそれだけではない。一人の人間の中に、いくつもの異なる要素が潜んでいそうなのだ。
どこか腰を据えたような骨太さ、強さといったものを感じる。同時に、自分を突き放して見ているような、クールさも。もしそうだとすれば、長丁場のドラマでは利点になるに違いない。役者にとって、「多面体である」ことは、才能そのものだから。
実は、波瑠は過去に『あまちゃん』『純と愛』など3回朝ドラのオーディションを受けて、落ち続けた人らしい。しかし芸能界入りは中学1年生。キャリアは長く、脇役やちょい役での出演作品も多い。いわゆる下積み時代に辛酸をなめてきたからなのか? 「自分なんてなんぼのもの」という、こだわりを軽やかに捨てる姿勢を身に付けたのかもしれない。
何と言っても、彼女のプロフィールが面白すぎる。趣味は「風呂」、座右の銘は「一視同仁」。若者らしくない(?)そうした不思議な一面も、このドラマにおいてはプラスに作用するはず。なにせ主役・あさのモデルとなった実在の人物「広岡浅子」は、一筋縄ではいかない女傑だから。
大阪有数の両替商に嫁ぎ、激動の時代に稀有な女性実業家となり炭坑事業で成功、日本初の女子大学設立、生命保険会社を起業という破天荒な人。そんなオンナの生き様を演じるには、相当な力量が必要。多面的な感性と幅を持つ波瑠に、思い切り暴れてほしい。