五十肩や膝痛、股関節や肘の痛みを抱え、鎮痛剤を飲んでも痛みが治まらず、日常生活に不便を感じている人は多い。これらの慢性痛の原因の一つとして、患部に発生した、ごく細い新生血管が作用していることがわかってきた。新生血管はレントゲンには映らず、血管造影しないとわからないため、今までは原因として考えられてこなかった。
痛みと血管の関係について、研究している江戸川病院運動器カテーテルセンターの奥野祐次センター長に聞いた。
「私はもともと、がん治療に携わってきました。がん性疼痛(とうつう)患者のがんの部位には、微細な血管が発生しているので、そこにカテーテルという細い管から薬剤を入れて血管をつぶす治療を行なうと、痛みが楽になったという症例が数多くありました。がん以外の慢性痛でも、血管が関係しているのではないかと思い、肩や膝痛患者の患部を血管造影したところ、新生血管があることがわかりました」
五十肩や膝痛などの患部は、長期にわたり炎症が起こっている。炎症は痛みの原因であるだけでなく、炎症が引き金になり、患部では血管が発生し、それとともに神経線維も増殖する。この増えた神経線維が、慢性痛の原因の一つになっているという。
五十肩で夜間の痛みで不眠になっている男女16人を対象にカテーテルを挿入し、新生血管に直接薬剤を注射する臨床研究を行なった。全員が治療後4週までに痛みの程度は3分の1に減少し、治療後24週経過しても治療効果が持続している結果が得られた。これを受け、臨床でも500例以上に治療が始まっている。