日本人には「油は健康によくない」という誤解をもっている人が少なくない。しかし油は脳の栄養源にもなり、完全に絶つと働きが鈍くなるので必要な栄養だ。とはいえ、よく言われる植物油なら安心と思うのも間違っており、動物性の油のほうが血管を傷つけないという報告もある。そこで長野県の諏訪中央病院名誉院長・鎌田實医師が、どんな油が質の良い油なのかについて解説する。
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いい油とはなんだろうか。やや専門的になるが、不飽和脂肪酸のなかのオメガ3という種類の油が、血管の健康にはいいと言われている。青背魚に豊富に含まれるDHAやEPA。エゴマ油、アマニ油、クルミだ。植物油の中にも抜群に血液サラサラのいい油がある。
オメガ3の油の効用は、コレステロールや中性脂肪を下げ、高血圧や脂質異常症などを予防し、動脈硬化や心筋梗塞のリスクを下げると知られている。
また、魚のDHAなどをよく摂る人はうつ症状が少ない、アマニ油で認知症にもなりにくくなる、といった期待もされている。オメガ3は頭にもいいのだ。さらに、黄斑変性症という目の病気の予防や、花粉症やアトピー性皮膚炎のアレルギー反応を抑えるなど、うれしいことばかりだ。
海のない長野県ではかつて、新鮮な魚からいい油を摂るのは容易ではなかったが、オメガ3を含むクルミを食べる食文化があり、いい油を摂ることができた。昔ながらの知恵である。
ならば、すべてオメガ3の油にすればいいではないか、と考えがちだが、これも間違いだ。不飽和脂肪酸のなかに、もうひとつオメガ6という油がある。実は、この油も体にとって必要な脂質なのだが、オメガ3とはまったく違う性質を持っており、摂りすぎると血液をベタベタにしてしまう。