国際情報

様々な差別ある韓国 全羅道が長く地域差別の対象となった訳

 韓国大統領の出身地は、11人中6人が慶尚道(韓国の南東部に位置。慶尚北道および慶尚南道)で全羅道(道韓国の西南部に位置。1896年に全羅北道と全羅南道に分かれた)は金大中氏わずか1人と不自然なほど片寄っている。背景には、長い歴史を持つ地域差別があった。ジャーナリスト、岸建一氏がレポートする。

 * * *
 ソウルの居酒屋でテーブルを囲む同年代の男たち。焼酎やマッコリを酌み交わし、すっかり酔いも回ってそろそろお開きとなったとき、1人の男がトイレに立った。それを見届けた別の男が、皆に向かってこう言った。

「会計はオレがやるよ。(トイレに立った)あいつにやらせたら、割り勘をごまかすに決まってるからさ。なんたって、あいつは全羅道(の人間だからな」

 それを聞いた残りの男たちは、にやけたような顔で笑った。トイレに立った男以外は、日本人の筆者を除いて、全員が慶尚道出身だった。

 筆者が10年ほど前に体験したエピソードだが、韓国社会には、こうした出身地をめぐる「地域差別」が、現在も根強く残っている。自国や自民族に対する差別には非常に敏感な反応を示す韓国だが、国内に目を向けると学歴信仰や男尊女卑など、さまざまな差別意識がはびこっていることに気付かされる。中でも地域差別は、その代表格だ。

 韓国では、全羅道が、長く地域差別の対象となってきた。とりわけ、木浦や光州などの全羅南道エリア一帯は「湖南」と呼ばれ、気候温暖な米どころとして豊かな食文化を持ち、歌舞音曲にも秀でていることで知られ、著名な料理家や芸能人を輩出してきた。だが、韓国内では「湖南の奴らは信用できない」と疎んじられる対象でもあった。

 そのルーツをたどっていくと、後百済(892年建国。全羅道地域を治めていた)を滅ぼし、朝鮮半島を統一した高麗(王建が建国した朝鮮王朝。918~1392年。935年に新羅を、936年に後百済を制圧して、朝鮮半島を統一)の王建(太祖)が、全羅道からの人材登用を厳しく戒めた歴史にあると言われている。

 そうした中で培われた差別意識は、現代にも引き継がれて、1961年の軍事クーデターで朴正熙が政権を掌握してから顕著になる。

関連キーワード

トピックス

佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト