ドラマの視聴率が落ちている昨今だが、それでもやっぱり人気が高いNHKの連続テレビ小説。その撮影の裏側はどうなっているのだろうか。現在放送中で視聴率も好調の『あさが来た』。そのエグゼクティブ・プロデューサーである佐野元彦さんに話を訊いた。
──朝ドラというとやはり新人女優を起用するということが多いのが、大きな特徴ですよね。
佐野:たとえば、大河ドラマであったら、百戦錬磨の俳優さん同士が、真っ向からぶつかり合う面白さがあると思うんですよ。でも、朝ドラはヒロインを演じる女優さんをチーム全体で高いところに押し上げていくもの。まさにそういう感覚で番組を作っています。この感覚はスタッフだけではなくて、共演する俳優さんたちも共有しているもので、出演者とスタッフが一丸になって女優を育てていくという現場は朝ドラだけだと思いますね。
それに、育っていくのは女優だけではない。NHKのドラマ部門に入ると、最初に朝ドラに担当することが多いんです。特に新人のディレクターは朝ドラで経験を積んでいくことが多くて、そういったスタッフたちもヒロインの女優さんと一緒に育っていくわけです。
そして、この感覚は視聴者も共有していると思います。毎朝、視聴者が物語の中のヒロインと、ひとりの女優の成長を見ていく。特に女性視聴者の場合は、自分の人生にも重ね合わることもあると思います。
──今回は、朝ドラとしては珍しく、貧困を乗り越えていくという女性ではなく、豊かな家の育ちで、嫁ぎ先もまた豊かな家ですよね。さらに、幕末から物語が始まるということで、局内からの異論は出なかったのでしょうか?
佐野:個人的にはもっといろんな反対意見が出るんじゃないかと思っていたんですけど、意外なくらい出ませんでした。本当にすんなりと企画が通っていったんですよ。ひとりの女性のシンデレラ・ストーリーとして時代そのものはそれほど関係ないということなんですよ。そのヒロインが魅力的であり、そして地に足をつけて頑張っているかどうか、そこが重要だということを理解してもらえたのだと思います。
──波瑠さんをヒロインに選んだ理由は?
佐野:波瑠さんは、今までどちらかというと静かな役が多いイメージでしたが、オーディションのなかで、グイグイ前に進んでいくキャラクターが似合う人なんじゃないかと感じるようになってきたんです。「みんなが知っている波瑠さんじゃない波瑠さん見っけ!」という感じで(笑い)。波瑠さんにしてみれば、「私はいつも前へ前への精神です」っていう気持ちかもしれませんが。
──今回キャスティングでこだわったところは?