国内

増える「脱出老人」 フィリピン移住の理由は生活しやすいため

 高齢の独身男性を狙った結婚詐欺事件、有料老人ホームでの不審な転落死など孤独な老後を送る高齢者が悲しい末路を辿るケースが昨今、後を絶たない。日本という、先行き不安な超高齢化社会でもがき苦しみ、みじめな老後を送るくらいなら、いっそのことフィリピンで幸せな老後を送りたい――フィリピン移住に賭けた人たちが見た光景とは。

 森脇とし子さん(仮名・84才)は昨年春から、南部のリゾート地・セブ島の高級コンドミニアムで暮らしている。

 長野県で夫が食堂を営み、繁盛していたが、夫の「お座敷遊び」が原因で離婚。東京に住む息子夫婦と15年ほど同居したがこじれ、長女、次女の家を転々とした。しかし行く先々でもめて、最終的には長女・優子さん(仮名・58才)の近所のアパートでひとり暮らしを始めた。子供たちとの生活が破綻したのは、とし子さんの怠慢な生活が原因だった。優子さんが語る。

「母は同居しても家事を一切しない、わがままな人でね。部屋の掃除なんかしやしません。弟の家でも、妹の家でも、母の部屋は散らかり放題のゴミ屋敷。アパートもゴキブリだらけでひどいものでした」

 優子さんは20代の頃から観光で何度もセブ島を訪れていたこともあり、現地には日本人の知人もいた。そんな経緯もあって日本で不衛生な部屋に引きこもっているよりも、セブ島で親切な人たちに囲まれて暮らすほうが母も幸せだと思ったという。

「セブ島は暖かい島だし、みんな親切。ヘルパーさんも安く雇えますから、健康的な暮らしができる。預金通帳も見せて母のために使うからと言ったら、最初は不安がっていた母も納得してくれました」

 娘によってフィリピンへ“移住させられた”形となったとし子さんは、現在の暮らしをどう感じているのだろうか。

「日本でひとり暮らしをしている時は寂しくはなかったけれど、楽しくはなかった。今は寂しくない、といったら語弊があるけれど、気楽。(日本の家族から)ちょっとは『追い出された』っていう気持ちはあります…。でも、日本に帰る気はないですね」

 超高齢者になって、住み慣れた場所を離れ、しかも海外へ飛び出すのは、いささか考えにくいシチュエーションだ。それにもかかわらず、とし子さんが快適に生活できているのは、フィリピン人は親しみやすく、高齢者に対する目線が温かいからだという。公用語は英語だが、互いに片言でコミュニケーションも取っている。

「フィリピン人の親しみやすさは、私の予想を遙かに超えていいものでした。母がみんなに好かれ、ヘルパーやフロントのフィリピン人が毎日部屋に来ていろいろなケアをしてくれているから、とても感謝しています」(優子さん)

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン