2017年4月に消費税率を8%から10%に引き上げる際の負担軽減策を巡る議論が迷走している。還付案はひとまず消え、軽減税率をどうするかが話題の中心となっているが、いったいどのような方法が適切なのか。どちらの案も不適当だという経営コンサルタントの大前研一氏が、より適切だと考える方法を提唱する。
* * *
この問題の発端は、公明党が2012年の総選挙で軽減税率の導入を公約に掲げたことである。しかし、それを実現するためには商品の価格や税率、税額が明記された「インボイス」(納品書・送り状)作成などの手間が事業者側にかかる、税収が大幅に減る(※注)、低所得層だけでなく富裕層まで恩恵を受けるといった難点があり、マイナンバー(社会保障・税番号)制度と連動させた財務省の還付案が9月上旬に急浮上した。
(※注:酒類を除く飲食料品を対象とした場合で約1兆3000億円減、外食を除外すると約1兆円減とされる)
だが、これには公明党が「痛税感が緩和されない」「消費者への負担が大きい」などと猛反発し、自民党内からも「マイナンバーカードが間に合わない」「全国の事業者に端末を配布するコストが高い」「個人情報漏洩のリスクがある」「高齢者や子供はどうするのか」といった批判や疑問が相次いだ。
しかし、それらの問題は端から予想できたことであり、そういうお粗末な制度を提案した財務省の役人の“劣化”もさりながら、当初はそれを全面的に受け入れて「マイナンバーカードを持ちたくなければ持って行かないでいい。その代わり、その分の減税はないだけだ」「けちつけるなら代替案を出さなきゃ」などと放言した麻生太郎財務相をはじめとする政治家の劣化は目を覆うばかりだった。