これも安倍政権のスローガン、「1億総活躍社会」実現の一環か。普通ドライバーが自家用車を使って乗客を送迎する“ライドシェア(相乗り)”サービスが地域限定で認められようとしている。
政府は2020年の東京五輪に向け、個人宅に観光客を泊める「民泊」をはじめインバウンド(訪日外国人客)市場の拡大を狙っているが、ライドシェアも同様に検討されてきたテーマだ。10月20日に開かれた政府の国家戦略特区諮問会議で、安倍首相は「外国人を積極的に受け入れる取り組みを後押しする」と意気込んだ。
そもそも、個人同士の商取引「CtoC」ビジネスの推進を訴えてきたのは、楽天の三木谷浩史社長が代表理事を務める新経済連盟だ。
「新経連は世界で広がりつつあるシェアリングエコノミー(共有型経済)の成長を促し、2025年に市場規模10兆円台を目指したいと提言。自民党の規制改革推進委員会や政府の規制改革会議などにライドシェア容認を要望してきた」(経済誌記者)
事実、スマホを使った配車で登録ドライバーと利用客をマッチングさせる事業で成功する米国のウーバーテクノロジーズ(Uber)が日本に上陸し、一時期ビジネス実験を行うなど“地ならし”は進んでいる。
「過疎化する地方では公共交通が減らされ、高齢者を中心に買い物や病院などに行く『足』に困っている人が多い。また、空いた時間に仕事やパートをしたい人たちの働き口が少ないため、地方経済がなかなか活性化しない実態もあった。そんなときに、普通免許さえあればできるライドシェアビジネスの広がりを歓迎する自治体も出始めた」(前出・記者)
その一方、ライドシェア容認の流れに猛反発しているのが、これまで国の管理下でクルマの台数や新規参入企業を決められてきたタクシー業界だ。
「私たちは乗客を乗せてビジネスをするために、一般ドライバーとは区別する二種免許をきちんと取得していますし、会社の看板を背負って厳しい安全教育も受けています。
それなのに、いきなり素人同然のドライバーが自家用車で客を乗せる“白タク”を許してしまえば、日本のタクシー業界の秩序が乱れるばかりか、私たちの商売も上がったりです」(千葉県内の法人タクシー運転手)