日本は不眠に悩む人が多いのに「睡眠薬は怖い」というイメージが広がり、睡眠薬の使用率は男性3.5%、女性5.4%と低い。実際に睡眠薬を飲んだらどうなのか? 本誌50代のオバ記者による、“自己流”睡眠薬体験記をご紹介。(文・野原広子)
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女優マリリン・モンローの死の床にも、大量の睡眠薬が転がっていたというではないか。手を出したらオシマイ。薬なしにはいられない体になる。これが昭和32年生まれの記者が長い間、睡眠薬に対して抱いてきたイメージだ。
でもそれも、ハーブ茶さえ飲めば気持ちよく眠りに落ちることができた40代半ばまでのこと。50才を目前にした頃から、夜中に、4~5回、尿意を覚えて目が覚めるようになった。7回という日もあった。眠い。でも眠れない。朝方うとうとするが、寝た気がしない。こんな状態が半月ほど続いたら、頭痛までしてきた。睡眠が足りてないせいか、血圧を測ったら165/90もある。
「どうにかなりませんか」
かかりつけの内科病院の女医さんに訴えたら、『リスミー』という薬を処方してくれた。それが私の睡眠薬初体験だ。
睡眠薬の威力は想像以上だった。1錠のんだらズドンと眠りに落ちて、7時間ぶっ通しで寝た。気持ちよく起きて、鼻歌まじりに朝ご飯を食べた。するとまた眠くなって、さらに2時間寝た。それでも体の奥に「睡魔」のカケラが残っている気がする。薬が効きすぎたか……。
再び医師に相談すると、「では、こちらを」と『レンドルミン』という薬を処方してくれた。今度もぐっすり眠れたが、翌日、微妙に体が重い。もしや1錠では多いのか。半分にしてのんだらどうか。試してみたら調子がいい。私は医師には相談せず、小さな錠剤をパキンと割ってのむことを習慣にしていった。
睡眠薬に慣れ始めた私は、薬というものをナメていたのだと思う。睡眠薬をのめば、いくらお腹が空いていても眠れるようになった私は、いい気になってこう考えた。「しめた、これならダイエットにもなる」。それからは“空腹時の半錠服用”が常態化していった。その1か月後のことだった。