フォルクスワーゲン(VW)による排ガス規制逃れの不正問題は、いまも情報が限定的でどこまで広がるかわからない。トヨタを抜いて出荷台数世界一の座についていた世界を市場とする大企業のスキャンダルは、これまでとは異なる困難に直面させられる可能性が高い。経営コンサルタントの大前研一氏が、今後、この問題がどこまで拡大する恐れがあるかについて解説する。
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排ガス規制を逃れる不正なソフトウェアを約1100万台のディーゼル車に搭載していた問題で、VWが存続の危機に直面している。ブランドの信用が失墜した上、今後のリコール(回収・無償修理)や賠償、罰金などの費用がどれほどかかるかわからないからだ。
同社のマティアス・ミュラーCEO(最高経営責任者)は、ドイツの大手紙フランクフルター・アルゲマイネのインタビューで「VWは縮小と分権化を余儀なくされる」との見方を示し、実際、ディーゼル車を販売していない日本国内でさえ、VWの9月の新車販売台数は前年同月比マイナス9.1%と急減している。
この問題はVWだけでなく、他の自動車メーカーにも波及する可能性が高い。すでにドイツではBMWのディーゼル車に対する疑惑報道が出ているし、もともとディーゼル車に強いダイムラーも本当に排ガス規制をクリアしているのか、ということになってくるだろう。
日本メーカーでは、NOx後処理なしでグローバルの排ガス規制に対応するクリーンディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D」で攻勢をかけているマツダが「法令を順守しており、違法行為はない」とのコメントを発表し、知り合いの同社関係者も「大丈夫」と言っていたが、あくまでも“主催者側発表”だから鵜呑みにはできない。