10月19日、中国の7~9月期の実質経済成長率(GDP成長率)が6.9%と発表された。中国政府が社会の安定のために必要だとしている「成長率7%」を割り込み、「リーマン・ショック以来の落ち込み」と大々的に報じられた。問題はその数字すら「偽り」だとみられていることだ。嘉悦大学教授の高橋洋一氏はいう。
「そもそもGDPの発表が早すぎます。先進国の1次速報発表は四半期末から約1か月後ですが、中国はわずか2週間で発表した。13億人を超える国民による広大な国土での生産・消費活動の数値をそんな短期間で計算できるはずがない。
しかも、先進国では速報値を発表した後に改定値、確定値を出していきますが、中国は発表した数値をめったに変えません。最初に成長率7%という“数字ありき”で辻褄が合うようにでっち上げているのではと疑われて当然です」
内部告発サイト「ウィキリークス」によると、中国の李克強首相が共産党副書記時代の2007年に駐中国の米国大使と会食した際、「中国のGDP統計は人為的であるため信頼できない。参考値にすぎない」と笑顔で話していたとされる。中国政府のナンバー2が「粉飾」を認めているのだ。
さらに李首相は中国経済の実態を評価するのに使える経済指標は、「電力消費量」「貨物輸送量」「銀行貸出残高」の3つくらいだと語ったとされている。英国の調査会社ファゾム・コンサルティングはこれら3つの「李克強指数」を用いて中国のGDPを試算している。その結果を伊藤忠経済研究所主任研究員の武田淳氏が解説する。
「『李克強指数』のうち、『電力消費量』は工業製品の生産量、『貨物輸送量』はその工業製品の鉄道による輸送量、『銀行貸出残高』は国民や企業がどれだけお金を使ったかを示します。2013年後半以降、中国では工業製品や鉄道に限ればマイナス傾向。それを考慮したファゾム社の試算では、中国の今年4~6月期の成長率は3.2%になる」