「孫疲れ」、という言葉が反響を呼んでいる。孫の世話は老後の最大の楽しみの一つではあるものの、程度次第では精神的、経済的にシニア世代が追い詰められていくこともある。なかには孫のための巨額出費で、老後生活が根本から変わってしまうケースも少なくない。
「4歳の孫娘がシックハウス症候群とわかり、息子夫婦が“娘のために郊外に一戸建てを買ってやりたい”と言い出した。でも、まだ30歳の息子にはそれだけの資金は無理。仕方なく、退職金2000万円をすべて息子に渡すことにしました。
おかげで今住んでいる家をバリアフリーにリフォームする計画は白紙撤回。老後の楽しみにしていた国内一周旅行も諦め、夫婦でシルバー人材センターに登録してアルバイト探しの日々です」(元会社員60歳)
家に次いで大きな負担となるのが教育費だ。2人の娘にそれぞれ高校3年生の孫がいる元会社員の男性(70歳)は、孫たちのために自宅を手放してしまった。
「長女の孫は美容系の専門学校を希望していて、2年間の学費が500万円。二女の孫は都内の私立大学に推薦入学がほぼ決まっていて、下宿費用などを含めて4年間で最低でも1000万円必要だという。最初は『そんなに出せるわけがない』と突っぱねていたが、娘たちが『もっと安い専門学校があるんじゃない?』『そっちこそ家から通学させれば下宿代が浮く』などと罵り合いを始めてしまって……。
いたたまれなくなって、家と土地を手放すことにしました。築30年の家屋に値段はつかなかったが、土地は3500万円になり、預貯金500万円を合わせて4000万円。生前贈与の手続きを取り、私の分を1000万円残して、娘たちに1500万円ずつ渡しました」